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2008年03月19日

火災保険Q&A

火災保険Q&A

板橋区にあります保険代理店の田中です。

Q.失火責任法の賠償責任や重過失とはどのようなことをいうのか。また、賃借人や子供等が失火により損害を与えたときの損害賠償責任はどのようになるのか?


【A】失火者の賠償責任

 通常、故意または過失によって他人に損害を与えると不法行為に
なり、行為者に賠償責任が生じる(民法709条)。隣家に損害を与えることは不法行為に当たるが、失火については、「失火責任法」によって過失の場合は免責されるので、失火者は故意または重過失による場合に限り賠償責任を負う。

<失火の責任に関する法律>
「民法709条の規定は失火の場合にはこれを適用しない。ただし、失火者に重大な過失があるときはこの限りではない。」




重大な過失(重過失)

 重過失の意義について、最判(昭32・7・9民集11・7・1203)は、
『通常人に要求される程度の相当な注意をしないまでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然とこれを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態』と判示している。
しかし、下級審判決では、この最高裁判決の「ほとんど故意に近い」という点に関して、やや緩やかに解釈する
(したがって、結果として重過失の範囲が広まる)傾向にある。




<重過失と判断された例>

1.天ぷら油に引火して火災が発生することは容易に予見でき、わずかな注意を払えば発生を防止できるもので、それをしなかった過失は重大であるとの考えに立ち、失火責任法上免責にはならない(東京地判昭57・3・29日判時1059・108など)。

2.寝たばこの火種により火災を発生させる危険性を十分認識しながらほとんど頓着せず、何ら対応策を講じないまま漫然と喫煙を続けて火災を起こした者には重過失がある
   (東京地判平2・10・29判時1390・95)。




爆発と失火責任

 爆発は失火ではないので、火薬類による爆発事故については失火責任法の適用はなく、民法709条により軽過失であっても賠償責任が生じる(大審院・大正2年2月5日)。

ただし、プロパンガスの爆発・炎上のように、爆発と火災の区別がつきにくいような場合は、失火責任法が適用される場合もある(失火責任法を適用しない判例の方が多い。)
  
(注)引火性の強いガソリンや石油の炎上事故には失火責任法の適用があり、重過失に限り賠償責任が生じる。なお、企業が業務行為としてガソリン・石油等の危険物を取り扱う場合、一般人より高度な注意義務が要求されるので、重過失が認定されやすい。




<失火と爆発>失火とは「誤って火を失し、火力の単純な燃焼作用で財物を滅失、毀損させること」であり、爆発とは「物質が瞬時に分解または化学反応を起こし、その際、一時に多量のガス、熱または光を出す状態」をいう」ので、失火と爆発は同一ではない。



賃借人の家主に対する賠償責任

@賃借部分の損害:通常は、賃借人は失火により、賃借部分の保存義務違反および返還義務違反をきたし、賃貸人(家主)に対して
債務不履行(民法415条)による賠償責任を負う。この場合には失火責任法の適用がないので、賃借人は軽過失であっても賠償責任を免れることができない。 

                 
A賃借部分以外の損害:賃借人は失火により、家主に対して不法行為(民法709条)
による賠償責任を負うが、「失火責任法」により故意・重過失がある場合にのみ賠償責任を負う。
しかし、判例では、いったん火が出れば延焼することが避けられない木造アパ−トのような場合は、賃借人は家主に対して、賃借部分と同じく債務不履行による賠償責任を負う(したがって、軽過失でも賠償責任を免れることができない)とする例が多い。

B他のアパ−ト入居者の損害:失火者は他のアパ−ト入居者に対して不法行為責任を負うが、「失火責任法」により故意・重過失がある場合にのみ賠償責任を負う。



子供の行為による失火 

責任能力のない未成年者の行為から失火した場合、それによって直接生じた損害か延焼損害かにかかわらず、未成年者の監督者である親権者に重過失があるときに限り、損害賠償責任が発生する。


<監督者の責任と失火責任法の関係>民法では、責任能力のない未成年者が第三者に損害を与えた場合、親権者は監督を怠らなかったことを立証しない限り監督者の責任(民法712条、714条)による賠償義務を負う。一方、失火責任法では、失火者に故意・重過失があるときにのみ賠償責任が生じる旨定めている。

@失火した未成年者に重過失があれば親権者が責任を負うか、それとも
A親権者の監督について重過失があれば責任を負うか、についてこれまで判例・学説は分かれていたが、最高裁判決(平7・1・24判時1519・87)が出たことにより、「監督について重過失があったときに限り賠償責任を負う」とする考えが固まった。



<責任能力>自分の行為について法律上の責任が生じることを弁識する(わきまえる)ことができる能力をいい、およそ12才前後に至るまでは責任無能力者とみられている。



社員と会社の賠償責任

 社員が借り上げ社宅を焼失した場合、通常は、民法613条1項により、社員(転借人)は賃貸人に対して債務不履行による賠償責任を負う。この場合には失火責任法の適用がないため、社員は軽過失であっても賠償責任を免れることはできない。
なお、判例(大審院・昭和4年6月19日)は、転借人(社員)を転貸人(会社)の履行補助者とみて、転貸人(会社)の債務不履行責任を肯定しており、会社も賃貸人に対して賠償責任を負う。

また、従業員の重過失で失火し、他人の家を焼失させた場合、業務中、従業員(被用者)が他人に損害を与えた場合、会社(使用者)は、その被用者の選任・監督について十分注意を
払っていたことを立証しない限り、使用者責任(民法715条)による賠償責任を負う。

会社(使用者)は被用者の選任・監督について不注意があれば(重過失がなくても)、被害者に対して賠償責任を負う。

(注)失火責任法は、失火者その者の責任条件を規定したものであって、失火者を使用していた使用者の帰責条件を規定したものではない。

改装作業中に業者が失火して賃貸ビルを焼失させた場合 改装業者は、通常は、原状回復義務違反と改装工事の完全履行義務違反により、ビルの所有者に対し債務不履行(民法415条)に
よる賠償責任を負う。この場合には失火責任法の適用がないため、改装業者は軽過失であっても

賠償責任を免れることができない。なお、判例では、構造上一体で、不可避的に延焼損害が生じた場合には、ビルの他の部屋の損害についても業者の賠償責任が生じるとしている。

また、賃借人(テナント)に対しては、改装業者は不法行為(民法709条)による賠償責任が生じるが、失火責任法によって、作業担当者あるいはその監督者に故意または重過失が認められる場合にのみ、改装業者は賠償責任を負う。       

(注)改装作業のうち、塗料や溶剤など揮発性の強い危険物を扱う業者には、高度な注意義務が課せられ、重過失による不法行為が認められる可能性が高い。
posted by 田中 at 12:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 火災保険 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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